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- 著者:谷津裕子
- 発売日:2022年6月3日
- 体裁:四六判、224頁
- 発売元:一般財団法人東京大学出版会
- 詳細・購入:http://www.utp.or.jp/book/b605372.html
本書はシリーズ「知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承」全9巻の5巻目。このシリーズは様々な分野の研究者が、自信の分野の最先端研究を一種の「エコロジー」として捉えなおし、それを「知の生態学」というスローガンのもとで世に問おうとするもの(「シリーズ刊行にあたって」より)。9巻の構成は「ロボット」「間合い」「自己と他社」「サイボーグ」「動物」「メディアとしての身体」「想起」「排除」「アフォーダンス」。
筆者の谷津裕子先生は宮城大学 人間・健康学系看護学群教授。同大学のWEBサイトに「看護のアート、看護哲学、質的研究方法論の開発、医療におけるジェンダーとセクシュアリティ、患者安全、アフォーダンス、アニマルライツと動物倫理など、幅広い関心を持ち研究に取り組んできました」と自己紹介されている。グラスゴー大学の修士課程で、Animal Welfare Science,and Lowを専攻されている。
動物を拘束しないと成り立たない動物園、食べるために動物を飼う畜産業。動物園動物と畜産動物を対象に、動物を利用することの倫理観を分析し、共生のあり方をさぐり、展望していく。
- 動物園:来園者、動物目線の来園者、動物園人
- 畜産:一般的な消費者、動物目線の消費者、一般的な生産者、動物目線の生産者
上記のように人を分類し、文献やインターネット情報をベースにして、丹念に解析しまとめられている。自分自身の動物へのスタンスを突きつけられる。3章で展開する動物への共感についてはとても考えさせられた。
伴侶動物や狩猟対象動物などを対象とした人との関係をどう捉えていくのかも読んでみたい。
主要目次
- 第1章 ひとから見える動物の多様なありよう
- 動物園の動物たち
- 畜産動物たち
- 第2章 ひとから見える世界、動物から見える世界
- ひとから見える動物
- 動物の見え方の違いを生み出す構造:アフォーダンスの視座から
- 第3章 ひとと動物、環境の倫理的つながり
- 主観主義のわな
- 善悪は実在する
- 財産としての動物
- 動物はひとと同等の地位を持つ
- 動物の声となる知識
- 動物の声となる共感
- 共感と身体
- 共感を妨げる要素
- 「なりきる」体験
- 共感のつらさ
- アニマリズムの視点