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■牛伝染性リンパ腫の制御に向けて 日本獣医学会が公開講座を開催

2022-02-09 19:07 | 前の記事 | 次の記事

公益社団法人日本獣医学会(猪熊 壽 理事長)は、2022年2月5日、オンラインで市民公開講座「牛伝染性リンパ腫の新規制御法の可能性を探る」を行った。160名以上が参加した。

まず、猪熊 壽先生が「牛伝染性リンパ腫-現状と問題点」のテーマで講演。次いで、北海道大学の今内 覚先生による「牛伝染性リンパ腫における免疫学的解析を基盤とした新制御法の試み」と、東京大学の間 陽子先生による「感受性・抵抗性牛を利用した新しい牛伝染性リンパ腫制圧戦略」の2講演、最後に総合討論が行われた。総合司会は東京大学の内田和幸先生が務めた。

2020年に家畜伝染病予防法で牛白血病から牛伝染性リンパ腫に改称された同疾患の抗体保有率は高く、2019年度では1,944戸、4,113頭の発生が報告されている。

法律における疾患名の改称の理由は「風評被害を防ぐため」ともいわれており、正しい情報を発信することは獣医界の責務でもあり、今回の公開講座は非常に有意義であろう。新名称の「牛伝染性リンパ腫」が臨床現場でも用いられるようになってきたが、牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)感染によるものは地方病性(成牛型)のもの。散発型のリンパ腫の原因は不明であり、猪熊先生は「学問上の分類整理は残る」と述べた。なお、今春発行される『獣医内科学第3版』では、血液・造血臓器疾患の章で牛伝染性リンパ腫をとりあげているが、その他に同章内で「リンパ腫/白血病」という項目を設けて解説している。

牛伝染性リンパ腫の確実な対策は淘汰であるが、数が多く現実的ではない。陽性牛では子供を産ませない、初乳を加熱するなどの垂直感染の防御、飼育の間隔を空けるなどの水平感染の防御などで対応できるはずだが、農家の同意はなかなか得られず、新たな対応策が望まれている。空胎期間の延長による経済損失の報告もある。

今内先生は、免疫制御機構(免疫チェックポイント)に着目。家畜など多種の動物の免疫チェックポイントの遺伝子を確定させ、感染ウイルス量の低減に成功した。その研究の過程で、パピローマウイルス感染による腫瘤の消退も確認され、疾病横断、動物横断的な創薬を目指している。

間先生は理化学研究所での牛伝染性リンパ腫の研究を30年間牽引してきた。プロウイルス量を制御することで同疾患制御技術を確立させ、ワクチン作成にも成功している。農林水産省が指針を示している「衛生対策」に加えて、「感受性・抵抗性牛を利用した清浄化対策」「育種戦略」「ワクチン戦略」を行っていくべきと提言した。間先生の講演の座長を務めた堀本泰介先生(東京大学)は「BLV制御のブレイクスルーになる成果」と述べた。

同市民公開講座の動画は、日本獣医学会より配信される予定。