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■猫のロードキル数を28万9,572頭と推定 人と動物の共生センター

2021-12-21 12:56 | 前の記事 | 次の記事

野外で死亡した猫の遺体回収数

人口/遺体回収数

幼齢猫収容数/遺体回収数

認定NPO法人 人と動物の共生センターは、野外で死亡した猫の数に関する全国調査を実施(2020年8月~9月)し、2021年12月6日、概要を公表した。11月3~7日に開かれた野生動物と社会学会では、理事長の奥田順之先生が、「2019年に野外で死亡した猫の数は推計28万9,572頭であった」と報告した。

野外で生息する猫の個体数動態を把握すること、不妊去勢手術の浸透などの各種要因が個体数動態に与える影響について考察することを目的に、全国ロードキル調査を実施した。

道路管理や清掃を行う業務の中で、野外で回収される猫の遺体回収数を把握している自治体が多くある。政令指定都市・中核市を対象に、質問紙を用いたアンケート方式で各自治体が把握している猫の遺体回収数調査を行った。

  • 調査対象:全国の政令指定都市・中核市の動物愛護管理担当部局(80都市)
  • 調査方法:郵送およびFAXによる質問紙の送付、回答依頼
  • 調査期間:2020年8月10日~9月30日
  • 調査項目:野外で死亡した猫の遺体回収数(2015年~2019年の5年間分)
  • 回答数:74都市(未回答6都市)
  • 有効回答数:41都市(2015年~2019年のすべての年度を把握)

猫の遺体回収数は、5年間で68,553頭から53,736頭と21.6%減少した。猫の遺体回収数は人口と相関し、保健所等への幼齢猫収容数と相関する傾向があった。

5年前から遺体回収数が減少したのは38都市、増加は3都市であった。人口10万人あたり遺体回収数は229.4頭(41都市平均)であり、であり、日本全体での遺体回収数の推計は289,572頭となった。

月最低平均気温がマイナス2℃以下になる6都市(札幌、盛岡、長野、八戸、宇都宮、甲府)に限ると、月最低平均気温と人口あたりの遺体回収数が相関した。

人口が遺体回収数と相関することから、人口が、餌(ゴミや人が与える餌)や棲家(家の軒下など)の量に影響し、これらが環境収容能力(その環境で猫が生息できる数)を定め、生息数に影響していると考えられた。また、人口は、交通量にも影響するため、猫の死亡率や、人目につきやすい交通量の多い道路で死亡する確率に影響していることも考えられた。サンプル数が少ないが、気温が低い地域では、月間平均最低気温が生存率、生息数、遺体回収数に影響しているのではないかと考えられた。

人口以外にも、野外で生活する猫に餌を与える人が多い地域では、環境収容能力が高くなると考えられる。地域の餌やりモラル・猫への考え方が猫の生息数に影響を与える可能性がある。

餌やりモラル・猫への考え方に関連し、野外で生活する猫に餌を与えるかどうかという点だけでなく、完全屋内飼育の実施率、猫は屋内で飼育するものだという認識についても、野外で生活する猫の生息数に影響を与えると考えられる。

近年、各地で野外で生活する猫に対する不妊去勢手術を行う活動が行われており、2015年から2019年にかけて遺体回収数が年々減っている要因として不妊去勢手術の普及が考えられる。一方で、生息個体数に対し、どの程度の割合で不妊去勢手術を実施することが、どの程度の繁殖抑制効果を生み、どの程度遺体回収数に影響を及ぼすかについては明らかになっていない。

餌やりモラル、完全屋内飼育実施率、不妊去勢手術、気温等の気象条件などの要因が、猫の生息数にどの程度の影響を与えるかについての検証は、今後の課題である。