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■新規のアルボウイルスを与那国島の牛から検出

2020-11-17 18:17 | 前の記事 | 次の記事

アルボウイルス分離の流れ:採取した牛血液を遠心分離で血球と血漿に分け、それぞれを培養細胞に接種。血液中にウイルスが存在していた場合は、培養細胞内でウイルスが増殖し、細胞障害が観察される。増殖したウイルスのゲノムを抽出し、既知のウイルスの場合はPCR法で検出されるが、未知のウイルスの場合は次世代シーケンサーによる解析でゲノム配列を決定する。

農研機構動物衛生研究部門と沖縄県家畜衛生試験場は、2020年11月16日、与那国島で2015年に採取した牛の血液から未知のウイルスを発見したと発表した。

蚊やマダニ、ヌカカ等の吸血性の節足動物に媒介される節足動物媒介(アルボ)ウイルスは、ヒトや家畜に病気を起こすものがあることが知られている。国内では、九州・沖縄地域を中心にアルボウイルスの蔓延による家畜の疾病の流行が、生産性に影響を与えている。

多くのアルボウイルスは、媒介する節足動物とともに、海を越えて国内に侵入することが示唆されている。農研機構と沖縄県は1994年より、アルボウイルスの常在地である東南アジアなどの熱帯・亜熱帯地域に近接する沖縄県八重山諸島で、牛へのアルボウイルスの感染状況を継続的に調査し、国内への侵入を監視してきた。

このたび発見したウイルスは全ゲノム配列によりレオウイルス科オルビウイルス属の新しいウイルスであることがわかり、ヨナグニオルビウイルス(Yonaguni orbivirus)と命名された。同ウイルスを分離した牛は健康であり、病原性については不明。

今後は、同ウイルスの家畜に対する病原性や、媒介昆虫、八重山諸島以外での分布状況等を明らかにしていく。また農研機構は「近隣諸国との情報共有など連携を深めながら、国内へのアルボウイルスの侵入リスクの査定や監視活動の強化を行い、行政機関が策定する防疫体制の拡充に貢献します」とコメントしている。

発表論文

  • Murota K, Suda Y, Shirafuji H, Ishii K, Katagiri Y, Suzuki M et al. Identification and characterization of a novel orbivirus, Yonaguni orbivirus, isolated from cattle on the westernmost island of Japan.
  • Arch Virol 2020 165(12):2903-2908.
  • https://doi.org/10.1007/s00705-020-04803-3