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東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下、福島原発事故)によって放出された放射性セシウムは、原子炉から直接飛散した放射性ガラス微粒子に含まれた形態と、鉱物粒子に収着した形態として環境中に存在している。詳細な汚染実態を把握するためには、2つの存在形態を判別し、それぞれの割合を見積もる手法の確立が望まれていた。
東京大学の奥村大河先生(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻特任研究員)らの研究グループは放射性セシウムに汚染された試料(農業資材、土壌、植物など)を適当な条件で酸処理することで、鉱物粒子は部分的に溶解して放射性セシウムを脱離するが、放射性ガラス微粒子はほとんど溶解せず放射能の変化は小さいことを明らかにした(https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6915/)。これにより汚染試料中における上記の2つの形態の判別と存在割合の評価が可能となった。
今後この手法によってさまざまな地域や種類の汚染物中の放射性セシウムの存在形態を明らかにすることで、福島原発事故による汚染の実態解明が前進することが期待される。
- 掲載誌:「Chemistry Letters」(2020年10月17日付 オンライン版)
- 論文タイトル:Distinction between Radiocesium (RCs)-bearing Microparticles and RCs-sorbing Minerals Derived from the Fukushima Nuclear Accident Using Acid Treatment
- 著者:Taiga Okumura, Noriko Yamaguchi, and Toshihiro Kogure
- DOI番号:10.1246/cl.200374
- https://www.journal.csj.jp/doi/10.1246/cl.200374