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■鳥獣の保護管理行政の点検 環境省

2020-09-25 11:42 | 前の記事 | 次の記事

ニホンジカ・イノシシの推定個体数と捕獲数の状況(検討会資料より)

環境省では、2020年9月24日、「鳥獣の保護管理のあり方検討会」の第3回検討会を行った。検討会の模様は環境省のYouTubeチャンネル「live kankyosho」でライブ配信された。

「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」が改正され、2015年5月に完全施行された。施行から5年が経過し、施行状況や鳥獣保護管理行政に関連する課題の見直しのために検討会が行われている。

検討会はこの3回目で終了し、今後、中央環境審議会自然環境部会(諮問)、鳥獣の保護管理のあり方小委員会での審議、2021年夏の中央環境審議会自然環境部会(答申)を経て、次の指針となる第13次基本指針を策定し、2021年秋に告示する。基本指針に基づき、2022年4月から第13次鳥獣保護管理事業計画が開始される。

検討会では、前回改正事項に関する点検ポイント、社会情勢の変化に対応する点検ポイントなどが議題となり、第3回検討会では、まず、鳥獣管理を強化していくために前回の法改正で規定された「第二種特定鳥獣管理計画」による都道府県の取り組み状況が概説された。ニホンジカとイノシシの個体数を2011年度比で2023年度までに半減させることを当面の目標(半減目標)として、捕獲の強化に取り組んでいる。ニホンザルは「ニホンザル被害対策強化の考え方」(環境省・農林水産省)に基づき2023年度までに加害群を半減させること、カワウは「カワウ被害対策強化の考え方」(環境省・農林水産省)に基づき被害を与える個体数を2023年度までに半減させることを目標としている。ニホンジカとイノシシは2014年度をピークに推定個体数は減少傾向にあるが、2023年度の半減目標の達成に向け、さらなる捕獲強化が必要とされている。

「生息数不明、捕獲の目標設定がない県にどう対応していくのか」「その違いは何なのかをきちんと分析すべきである」といった意見があった。

高病原性鳥インフルエンザや豚熱などの野生鳥獣に関連する感染症対策も討議された。その対応に以下のことがあげられている。

  1. 国内における野生鳥獣由来の感染症に関するリスク評価や感染症の観点を踏まえた野生鳥獣の管理手法のための情報収集や基盤整備を進める(情報収集、技術的支援)。
  2. 感染症対策としての鳥獣保護管理の必要性を基本指針に明確に示すとともに、CSF・ASFの防疫措置の充実・普及啓発を引き続き実施する。また、野生鳥獣由来の感染症が発生した際の狩猟及び捕獲物の取扱等を整理する(基本指針、通知、技術的支援、普及啓発)。
  3. 研修のオンライン化を推進するとともに、新型コロナウイルス感染症等による外出規制や集合した試験等の開催が難しい場合における、試験の柔軟な実施を可能とするような規定を検討(法令、基本指針、通知、技術的支援)。
  4. 「ASFについては、従来にない政策で対応すべき事項である」との発言があった。

    そのほか社会情勢等の変化に対応して課題となっている以下の点も討議された。

    • 野生鳥獣に由来する感染症対策、Withコロナ社会への対応
    • 野生動物のサーベイランス、感染症拡大防止・発生時対応
    • 狩猟免許試験、研修等の開催方法
    • 野生鳥獣保護管理におけるデジタル化の推進
    • 捕獲情報収集システム
    • 捕獲許可、狩猟者登録証に基づく捕獲報告の制度
    • 野生鳥獣と人の生活圏の棲み分け
    • 市街地等における捕獲制度
    • 新たな捕獲・忌避技術
    • 外来鳥獣対策の推進
    • 狩猟鳥獣、捕獲許可基準等における外来鳥獣の取扱い
    • 鳥獣の保護の推進
    • 希少鳥獣、希少鳥獣保護管理計画
    • 鉛中毒・鉛汚染防止対策
    • 錯誤捕獲防止対策
    • 狩猟者等の鳥獣の捕獲の担い手や、都道府県・市町村における鳥獣保護管理の専門人材の不足に対する対応も従来から継続した課題となっている。

    検討委員は以下の通り(五十音順、敬称略)

    • 浅野能昭(一般社団法人大日本猟友会 専務理事)
    • 石井信夫(東京女子大学 名誉教授) 座長
    • 坂田宏志(株式会社野生鳥獣対策連携センター 代表取締役)
    • 羽澄俊裕(環境省登録・鳥獣保護管理プランナー兼福島県鳥獣対策専門官)
    • 濱﨑伸一郎(株式会社野生動物保護管理事務所 代表取締役)
    • 羽山伸一(日本獣医生命科学大学 教授)
    • 三浦慎悟(元早稲田大学 教授)