HOME >> JVM NEWS 一覧 >> 個別記事
環境省と農林水産省は、「愛玩動物看護師カリキュラム等検討会」を設置し、2020年8月24日に第1回目の検討会を環境省の会議室で行った。「愛玩動物看護師法」を施行していく上で必要な事項を審議する。同日は、会議室に集まって討議が行われ、また傍聴、取材も15名ほどの入室が許可された。そのほかに約200名がWeb傍聴した。事務局による会議の進行は主として環境省が司った。
座長には東京大学の西村亮平先生が就任し、まず次の5つことを念頭において欲しいと述べた。
- 愛玩動物看護師とは自身にとってどういうものか
- 獣医療はまず安全が第一であること
- 社会が愛玩動物看護師をどうみているのかという社会通念
- 医療での看護師の仕事の内容も変化しており、将来に変えていくことは可能であること
- 会議にあたっては資料をじっくり読み、討論の時間が多く取れるようにすること
主な検討事項は以下となる。
- 愛玩動物看護師に求められる役割、知識、技能
- 大学および養成所における必要な科目(養成所とは専門学校等で、3年制が必要となる)
- 受験資格の特例
- 国家試験、予備試験
座長の西村先生は、「診療補助」(「愛玩動物看護師法」の第2条)とは何かを規定していくことが最も重要なことである。それが決まれば、カリキュラムの内容や国家試験のやり方が自ずと決まっていくだろうと述べた。
診療補助が高度化しすぎている面もある、院内の衛生管理や入院動物の世話は診療補助に入れてもよいのではないかなどの意見もあった。また診療補助の枠をこえて、適正飼養、しつけ、マナー、ペットツーリズムなどここ数年で広がりつつある獣医療の周辺領域を担う人材を養成していくべきではとの意見も出された。
委員で弁護士の浅野明子先生は、「獣医師法」で規定されているが「愛玩動物看護師法」にはない「保健衛生の指導」を、法的にどう取り込んでいくのかを考えるべきである。また「愛玩動物看護師法」の第2条にあるとおり「診療補助」とは「衛生上の危害の恐れが少ないと認められる行為」であり、その範囲を決めていくことになる。さらに同条にある「獣医師の指示のもとで行われる」の「獣医師の指示」もどの程度のものかを示す必要があろうと述べた。
そのほか、国家試験にあたっては、現職として働いている認定看護師が受けやすく資格が取りやすいものにしていくべきだという声が複数あった。
また、カリキュラムにおける実習の規定は、コロナウイルス感染症禍のような事態でも対応できるようなものにすべきとの意見があった。
環境省の動物愛護管理室の長田 啓 室長は、「動物病院の診療補助のみならず、動物の適正飼養管理に関わることを担う人材、自治体におけるその業務を担う人材が輩出されるようになってほしい」と述べた。
なお、各委員には、業務の範囲、知識、技能をどう考えているかを提出するという宿題が出された。次回はさらに具体的な討議がなされることになる。
今後は2020年9月中までに2回目、3回目の検討会、10月~2021年1月中に4回のワーキングチームによる会合、そして2月に5回目のワーキングチーム、最後に第4回目の検討会を行い報告書がまとめられる予定。
委員メンバー(五十音順、敬称略)
- 浅野明子(高木國雄法律事務所 弁護士)
- 近江俊徳(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科 教授)
- 太田亟慈(一般社団法人Team HOPE 代表)
- 加隈良枝(帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科准教授)
- 川田 睦(公益社団法人日本動物病院協会 会長)
- 佐伯 潤(一般社団法人日本小動物獣医師会 副会長)
- 境 政人(公益社団法人日本獣医師会 副会長兼専務理事)
- 桜井富士朗(日本動物看護学会 理事長)
- 下薗恵子(一般社団法人全国動物教育協会 会長)
- 東海林克彦(公益社団法人日本愛玩動物協会 会長)
- 西村亮平(国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
- 松永和紀(科学ライター)
- 水越美奈(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科 教授)
- 横田淳子(一般社団法人日本動物看護職協会 会長)
愛玩動物看護師法に関する資料(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/kangoshi/index.html)