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農林水産省は、2020年6月24日、「食料・農業・農村政策審議会 家畜衛生部会 第59回牛豚等疾病小委員会」と「第5回CSF経口ワクチン対策検討会」の合同会議をWeb会議で行った。
同省は、6月29日に合同会議での委員の発言や指摘をまとめたものを発表した。内容は以下の通り。
- 野生イノシシ対策の目的は、野生イノシシにおける豚熱(CSF)の感染拡大を防ぎ、その後の清浄化を目指すこと。2019年3月から開始した経口ワクチン散布は、1年が経過し一定の効果が確認されている。CSFの全国的な拡大を防ぐとともに、感染地域における環境中のウイルス濃度の低減のため、捕獲およびサーベイランスとともに、引き続き総合的な対策を講じるべき。
- 「家畜伝染病予防法」を改正し、CSFまん延防止のための野生動物への経口ワクチン散布等の対策を安定的に行えるよう、新たに法律に位置づけられたが、本対策はまん延防止のためにイノシシ感染エリアの外側のみならず、感染エリア内においても散布が必要であり、それらは長期間を要すると考えられることから、環境中で安定的な国産ワクチンの開発や、今回の分析結果を踏まえた長期的かつ安定的な実施方法を検討すべき。
- 当初から散布を開始した岐阜・愛知においては、感染個体の割合の減少および免疫獲得個体の割合は上昇しているが、感受性個体となる幼獣の割合が高く、また、地域によっては地域内で免疫が十分に付与されていない。その他の県については、まだデータ数が少なく十分な分析はできないが、免疫獲得個体の割合は低く、感染が維持・拡大するおそれがある。引き続き対策を継続し、データを収集することが必要。
- 今後も経口ワクチンの散布を継続するためには、現場での作業負担の軽減や費用対効果を考慮した見直しの検討が必要。今回の分析結果から見ても夏期(7~9月)散布、餌付け、回収、1期2回の散布等、効率化を検討できる余地はあるのではないか。夏期散布については、暑熱環境におけるワクチン失活および移行抗体消失期間等を踏まえた効果的な散布を検討する必要がある。今後の散布のあり方の検討や清浄化に向けてもサーベイランスは重要。
- 空中散布においては、実用化を進めていくとともに、希少野生生物への影響を考慮し、事前によく関係環境部局と協議して散布エリアを選定することが必要。
- 捕獲現場における防疫措置や、効果的かつ効率的な捕獲を実施するため、得られた知見やマニュアルを用いて、専門知識を持った上で活動できる人材の育成を強化する必要がある。また、捕獲個体の処分(埋却や焼却等)を実施しやすくする配慮が必要。
- 昨年10月から飼養豚でのワクチン接種を開始し、本州においては昨年12月以降発生がないという状況を踏まえれば、養豚場における発生リスクは低下し、以前とは状況が異なる。他の養豚施策とのバランスも考慮しつつ、今後、法に基づく防疫措置として長期的、安定的に実施していくためには、関係都府県は広域的な観点からも散布地域・散布計画等の連携を図りながら、サーベイランスによる感染状況の把握、経口ワクチン散布、イノシシ捕獲等の対策を総合的に推進していくことが重要。