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農林水産省消費・安全局動物衛生課は、2019年9月30日、農林水産省講堂で、都道府県の家畜衛生担当者等を対象に「令和元年度 越境性動物疾病防疫対策推進会議」を開催した。
会議は2部構成で、第1部の内容は以下の通り。第2部は非公開であった。
- 動物衛生課からの連絡事項(沖田賢治先生ら)
- (1)海外における越境性動物疾病の発生状況
- (2)第2回OIE/FAOアジア地域アフリカ豚コレラ専門家会合および地域総会の概要
- (3)令和元年度における高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の強化
- 講演「危機対応について」木村玲欧先生(兵庫県立大学)
- 講演「豚コレラ国内分離株の病原性および国内備蓄ワクチンの有効性」山下麻依子先生(農林水産省動物医薬品検査所)
議題1では、アフリカ豚コレラ、口蹄疫、鳥インフルエンザ、豚コレラの国際的な発生動向や中国など周辺諸国の防疫措置の状況などが説明された。水際対策の強化(検疫犬の増頭、飛行機の国内線での消毒マットの設置、海外からの渡航者に対して注意文書がいきわたることの徹底など)をはじめとする防疫対応や国際協力の強化連携について紹介があった。
次いで木村先生が危機管理の「どうすれば危機管理が行えるのか」という基本的な考え方について丁寧に解説した。
最後に山下先生が、豚コレラの岐阜株を用いた実験の結果を報告した。
岐阜株の病原性のまとめは以下の通りであった(講演資料より)。
- 経過は慢性型に近い。
- 全頭に見られる臨床所見等は、発熱、発熱による発赤・振戦、WBC減少、活力低下、うずくまり、食欲低下、膿様鼻汁漏出。
- 個体によっては下痢、紫斑、眼瞼腫脹。
- 摘発までに感染後9日以上を要すると推察。
- 臨床症状が収まり、抗体が陽転すると、臨床症状が回復する個体がいる。
ワクチンの有効性のまとめは以下の通りであった(講演資料より)。
- ワクチンは、発熱、WBC減少、臨床症状の発現、ウイルス血症、糞便からのウイルス排泄を抑制する。
- ワクチン効果は、接種後3日目からある。
- 岐阜株に対してワクチンとして有用。
なお、江藤 拓 農林水産大臣が冒頭で挨拶を述べた。自身の出身地である宮崎県での口蹄疫禍のことにもふれ、豚コレラのワクチン接種について「接種したから安心といった指導にならないよう気を緩めないで欲しい。地域のために農家からみれば悪者になるくらい徹底した指導を行って欲しい。地方の現場の方々が危機感をもって事に当たらなければ危機は乗り越えられない」と語った。