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- 中山裕之 著
- 東京大学出版・2019年5月15日発売
- A5判、168頁
本書は東京大学獣医病理学研究室の現役の教授である中山裕之先生が獣医師をめざす高校生や大学生に向けて「獣医師とはどんな職業か」を書いたものである。動物病院の仕事や出来事に関する本は多くあるが、大学の教員が綴った本は多くはないだろう。読後感は「獣医病理学にはロマンがあり、楽しそうだな」である。獣医師というよりも、学問探究へのいざないと感じた。
目次は下記に紹介しているが、第II部に中山先生が辿ってきた病理学をベースとする話が展開される。第5章では腫瘍とはなにかがわかりやすく解説され、第6章ではフラクタル病理など最前線の研究にもふれている。また、in silicoなど最新の手法の記述が散りばめられている。第II部の最後には同研究室が代々取り組んでいる研究テーマである「老化」を解説している。
章タイトルである「病気の進化」「老化の進化」に少しひっかかりを感じたが、病気や老化は生命の進化、文明の発達によって変化し、またその概念も変わっていくことを表現しているようである。病理学とはそのようなことを追究していく学問なのであろう。
本書の対象となっている高校生や大学生には道しるべとなり、また獣医師の先生方にも読み物としてとても楽しめるお薦めの書である。
- 目次:
- はじめに
- 第I部 獣医学とはなにか
- 第1章 獣医師という仕事
- 第2章 獣医師への道
- 第II部 獣医学の現場から
- 第3章 ラクダとアルゼンチン
- 第4章 顕微鏡下の世界
- 第5章 動物の腫瘍
- 第6章 数字で表す病気
- 第7章 動物の認知症
- 第8章 病気の進化
- 第9章 老化の進化
- 第III部 大学の獣医学-来しかた行くすえ
- 第10章 獣医病理学研究室の午後
- 第11章 獣医学の意義と将来
- おわりに
- さらに学びたい人へ(文献)
- 問合せ:一般財団法人東京大学出版会
- Tel 03-6407-1069 Fax 03-6407-1991
- http://www.utp.or.jp/book/b441066.html