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■アフリカ豚コレラ 緊急シンポジウム

2018-12-28 18:25 | 前の記事 | 次の記事

アフリカ豚コレラ緊急シンポジウム(2018年12月28日 日本学術会議講堂)

 日本学術会議では、2018年12月28日に同講堂で緊急シンポジウム「アフリカ豚コレラ」を開催した。年末の開催ではあったが、100名ほどの参加者が集まり、活発な討論が行われた。

 開催したのは同会議食料科学委員会の獣医学分科会(高井伸二 委員長)、食の安全分科会(石塚真由美委員長)と畜産学分科会(眞鍋 昇委員長)の3分科会。

 高井伸二先生(北里大学)の開会の挨拶(写真)に続き、座長を務めた杉山 誠先生(岐阜大学)が「このシンポジウムは、正しい情報を発信するために行うもの」と述べた。

 まず杉浦勝明先生(東京大学)がアフリカ豚コレラの概要と疫学について述べた。アフリカ豚コレラウイルスは動物の感染症を招くウイルスのなかで最も複雑な構造である。1921年にケニアで発見され、1960年代から1980年代にヨーロッパで広がり、1990年代から2000年代でアカフリカでの感染が拡大した。2018年はハンガリー、ブルガリア、ベルギーで発生し、そして中国で猛威をふるっている。日本への侵入に関しては、イノシシへの感染・流行に特に注意すべきとのこと。

 次いで、山田 学先生(農研機構動物衛生研究部門)がウイルスの診断と研究状況について講演。山田先生は米国でウイルスの感染実験に参加し知見を深め、国内の体制整備に尽力。主な診断法は検証され、動物衛生研究部門でのアフリカ豚コレラの診断体制は整っているとのこと。同疾患は「感染力の強い熱性伝染病」で、豚は発熱しふるえて壁際に集まり(その様子は豚コレラに似る)、そして死んでいく。死亡原因は肺水腫と血液の異常による。ただ、外貌の変化はなく、突然にバタバタと死んでいくようであるとのこと。水際検疫でみつかったソーセージと生ギョウザの詳細な検査は陰性という判断とのこと。ウイルスは冷凍に強く、生肉とソーセージでの冷凍実験では13か月経っても感染性を有していたとのこと。同疾患に感染した宿主には中和抗体が産生されないため、今のところ有効なワクチンはない。日本はワクチン開発をリードしているスペインと連携しているほか、独自にウイルスの弱毒化や遺伝子組換えに必要な培養細胞系の研究を進めている。

 次いで釘田博文先生(国際獣疫事務局アジア太平洋事務所)が講演。まず国際獣疫事務局(OIE)の概要を述べた後、国際機関が果たしている役割、その中でアフリカ豚コレラへの取り組みについて述べた。ウイルスがすでに侵入している可能性に備えて、農場のバイオセキュリティをきちんと行う必要性を訴えた。

 次いで山野淳一先生(農林水産省)が中国での発生の詳細を解説し、中国での衛生に対する意識低さ、小規模農家が多いことなどが感染の拡大の原因ともなっていると述べた。中国では4億8千万頭の豚が飼育されており、それは世界の飼育頭数の半数となる。小規模農家は2,600万戸あるという(日本の豚の生産農家は4,500戸)。国は情報収集の徹底、生産者への注意喚起、予防の徹底を行っている。

 最後に芳賀 猛先生(東京大学)が、正しい情報発信の大切さについて述べた。日本学術会議では「危機対応科学情報発信組織」を設置する準備を進めており、科学的に正しい情報をよりよく発信していく体制をつくる。

 なお、山野淳一先生は岐阜県等での豚コレラの発生についても講演でふれた。この時点で農家での発生の6件のうち、3件は岐阜県の公的機関であり、そのことは「危機感をもって対応している」と述べた。イノシシ(12月26日時点で岐阜県で583頭を検査し81頭が陽性、愛知県では22頭を検査し2頭が陽性。両県以外では134頭を検査し全て陰性)に対してワクチン接種が検討されていると報道されたことを受けて、同省のワクチンに対する考え方について述べた。飼育豚での対応は防疫指針に従い早期発見とと殺が防疫の基本で、ワクチン接種は防疫措置が間に合わない事態などに限る。イノシシへのワクチンについてはフランスやドイツの一部地域での例があり、使用方法、効果判定、貿易への影響等の情報の徹底収集と分析を進めているとのこと。なおイノシシの検査は、生息密度を減らして感染拡大のリスクを減らすとい面もねらってのこと。